(いつもみてる風景) |
「いつもの場所で」はここ。 〜宇東川緑道の石橋〜 | ||||||
「じゃあ、今夜は11時に集ろうぜ」 「OK!いつもの場所で」 「了解。いつもの場所で」 僕たちがまだ18歳くらいの頃、 週末の夜はいつも友達と遊びに出かけていた。 そんな僕たちの集合場所はいつも、ここ。 この場所だった。
僕たちは、いつもここから出発した。 女の子たちをさがしにくりだした。 ビール代をかけてビリヤードを何ゲームもやった。 将来への夢や不安を語りながら、海岸線をいつまでもドライブした。
宇東川緑道のはずれにある、石橋。 ちゃんとした名前は知らない。陸橋とも呼んでたかも。 ただ、僕たちには名前は要らなかった。 なんといってもここは、「いつもの場所」だったのだから。
僕たちはここから出発して、そして、いつもここに戻ってきた。 かわいい女の子はつかまらず(たいていの場合そうだった)、 ビリヤードにもすっかり飽きてしまったり、 湘南をぶっ飛ばして江ノ島までドライブしながら いろいろなことを語り疲れた僕たちは やがていつもここに戻ってきた。 友達は、石橋の手すりによりかかってる。 僕は、猿の頭をした置物に座ってコーラを飲んでる。 チャリンコでぐるぐると走ってるヤツもいる。 みんなしていつまでも くだらないジョークを言いあってた。 こうして解散するのは、いつも明け方だった。 2時くらいに帰るのは、けっこう早めの別れだった。 僕たちはいつも集まってはくだらないバカ騒ぎをして、 そして、いつまでも帰らずにここにいた。 そんな風にしながら、僕たちは探していたのだ。 そう、あれから10年が過ぎた今は、 ハッキリと分かる。 僕たちは、探していたのだ。 くだらないバカ騒ぎをしながら、必死に探していたのだ。 僕たちは、いったい何を探していたのか? それは、あなたがすでに10代を走り終えたのであれば あえて言葉にしなくても分かるはず。 もしもあなたが今、10代ならば、 きっとあなたも今、探しているはずだと思う。 いずれにせよ、言葉にすれば陳腐になってしまう。 そんなものを僕たちは探していたのだ。 ---------------------------------------------- 僕がここで書こうとしたのは、決して郷愁の念なんかでは無い。 10代の頃を懐かしむ気持ちは、僕には全くない。 いつだって今この瞬間こそが いつも最高に楽しいし、そして大好きだから。 そして、かつてここに集っていた悪友たちもみんな、 僕を残して、この街を離れていってしまった。 いろいろな事情があったり、 ずっと暮らしていくほどにはこの街に魅力が無かったのだろう。 ただ、僕1人きりだけ、 変わらずに、ここに残っている。 時々どうしようもなく孤独な気持ちに襲われながら、 それでも僕は変わらずに、ここにいる。 何故なら僕が探したものは、 ここにあったから。 遠く離れてしまった友たちよ、お前らは見つけたか? |