議会では、こんなやりとりしています

動画で質問の様子をみることができます。
市議会HPの日程平成19年9月28日をご覧下さい。

2007年9月議会・本会議(9月28日)、市長への質問













調













 <はじめに>

 藤野 英明です。よろしくお願いします。



 1.自殺予防総合対策をさらに推進するために
  「本市の自殺の実態調査」を行なうべきではないか


 自殺対策基本法の成立から1年以上が経ちましたが
 今も自殺対策への取り組みは
 全国の自治体ごとに温度差があります。

 そんな中、本市では全国に先がけて
 自殺対策連絡協議会を設置し、
 9月10日の世界自殺予防デーには
 自死遺族の気持ちを理解する為の講演会を開催するなど
 先進的に取り組んできました。

 また、自殺に追い込まれるあらゆる要因に対して
 利用できる相談窓口が分かる冊子、
 『よこすか心のホットライン』も配布されました。



 こうした多くの取り組みによって、
 自殺予防の「基本的な枠組み」は完成したと言えるでしょう。

 ここからさらに有効な対策を進めていく為に
 本市は新たな次のステップに進む必要があります。

 それは地域特性に応じた対策に取り組むことです。

 自殺には、全国共通の社会的原因と同時に
 地域ごとの特性があります。

 本市の地域特性の一例を挙げると、
 例えば、男性の自殺数は女性の2倍以上である、
 というはっきりとした性差がみられます。

 こうした本市の特性に応じた対策を
 重点的に行なっていくことが、本市の次の課題なのです。

 地域特性の要素は性別の他にも、
 年齢・職業・多重債務の有無などたくさんの要素がありますが
 現状ではあまりにも基本的なデータが不足していて
 詳しい分析ができません。

 ようやく今年に入ってNPOと東京大学が共同で
 全国で1000人の自死遺族の方々への
 聞き取り調査を始めました。

 しかしこれはあくまでも
 日本全体の傾向を調査するものであって
 「横須賀市の自殺の実態」を把握できるものではありません。

 そこで、本市としても遺族からの聞き取り調査を行ない、
 警察の持つ遺書に基づいた死因の分類などの
 詳細な統計データを提供してもらうなど
 本市の実態把握を行なうことが必要不可欠です。

 そこで市長にうかがいます。

 <質問>
 今後さらに有効な対策に取り組む上で
 「本市の自殺の実態調査」を行なうべきではないでしょうか。

 お答え下さい。

































 2.アメリカ軍兵士による犯罪を防止し、
  市民の体感治安の悪化と犯罪不安の高まりを防ぐために

 (1)アメリカ軍兵士の犯罪を防止する
  「基地周辺地区安全対策協議会」は、
  今後どのような事態が起こった時に開催されるのか


 アメリカ兵による女性殺害事件を受けて発足した
 「基地周辺地区安全対策協議会」は
 今年4月を最後に開催されていません。

 その間にもアメリカ兵によって、
 7月には馬堀海岸で女性2人が刺された殺人未遂事件が、
 9月には根岸町で暴行事件が起こされました。

 市長は5月31日の市議会にて、
 協議会は今後「必要に応じて開催する」と答弁したにも関わらず、
 協議会を開催していないのです。

 つまり「暴行」や「殺人未遂事件」では
 開催する「必要」にはあたらないということですか。

 実際に人が殺されなければ
 協議会を開催しないのでしょうか。




 そこで市長にうかがいます。

 <質問2(1)>
 今後は一体どのような事態が起こったならば、
 基地周辺地区安全対策協議会を開催するのでしょうか。

 お答え下さい。




















































 (2)「基地周辺地区安全対策協議会」を発展的に解消して、
  市内全域を対象にした
  「米軍人・軍属等による事件・事故防止のための
   協力ワーキングチーム」を設置すべきではないか


 アメリカ軍のケリー司令官は
 アメリカ軍も横須賀市民であるとの発言を繰り返してきました。

 市長もまた繰り返し
 アメリカ軍を「良き隣人」であるとして
 共生の実現を目指す主旨の発言をしてきました。

 異文化と共に生きる、共生、ということは
 きれいごとでは実現しません。

 率直に「負の側面」も直視すること、
 問題の理解、解決への不断の努力が不可欠です。

 本市の場合、「負の側面」とは、
 「アメリカ兵が起こす犯罪」です。

 先日、市長は

 「全てのアメリカ兵が
  犯罪者であるかのような扱いをすべきではない」

 と述べましたが、それはまさにその通りです。

 全てのアメリカ兵が犯罪を侵すわけではありません。

 しかし、アメリカ兵による犯罪が1件起これば
 全てのアメリカ兵を犯罪者のように見てしまう視点が
 市民の中に起こるのもまた「直視すべき現実」だと僕は考えます。

 また犯罪の「内容」が残酷なものや悪質なものが多い為に
 マスメディアのとりあげ方も大きく、
 実際の「犯罪件数」以上に
 市民の「体感治安」は大きく悪化しますし「不安」は高まります。

 そんな現状がある中、
 市内全域で暮らすアメリカ兵の数は確実に増えています。

 さらに来年8月に原子力空母の母港化によって
 より多くのアメリカ兵が市内で暮らすようになれば
 市民の「体感治安」の悪化や「犯罪不安」の高まりも
 今以上のものになっていくでしょう。

 市長の言う「良き隣人」としてのアメリカ軍との
 共生の実現を目指すのであれば、
 「負の側面」を直視し、
 「より現実的な対応」を取るべきです。

 現時点でもアメリカ兵による犯罪は
 基地周辺だけで起こっているのではありません。

 対象地域を基地周辺のみに限定して発足した
 現在の「基地周辺地区安全対策協議会」は
 一定の成果をあげましたが、
 今後は実態に応じて市内全域を対象とすべきです。

 また、市として、
 アメリカ兵による犯罪の実態を適切に広報すると共に
 アメリカ軍が行なっている教育体制を
 全ての市民が実際に視察できる機会や
 意見交換・提案ができる場を積極的に設けるなど、

 実態を広く市民に理解してもらうことで、
 行き過ぎた不安が広まるのを
 是正していく必要があります。

 そこで、市長にうかがいます。

 <質問2(2)>
 市民の安全安心を守る為にも
 新たな取り組みが必要ではないでしょうか。

 実態に即して
 「基地周辺地区安全対策協議会」を発展的に解消し、
 さらに対象を市内全域・全市民とした
 新たな安全対策協議会を設置すべきではないでしょうか。

 僕はこれを沖縄県の取り組みにならって
 「米軍人・軍属等による事件・事故防止のための
  協力ワーキングチーム」と仮称しますが、
 こうした取り組みが必要ではないでしょうか。

 市長の考えをお聞かせ下さい。




















































 3.ある殺人事件から本市が学ぶべきこと

 市内で殺人事件が起こり、40代の夫が妻を殺した容疑で逮捕されました。

 報道では、夫は2年前から無職で
 約1000万円の借金を重ねた末に
 生活苦から無理心中をはかって妻を殺害、
 逃亡の末に逮捕されたとのことです。

 仮にこの動機が事実だとすれば、
 「心中」や「殺人」という思考に追い込まれる前に
 現在すでに本市が行なっている取り組みが届いてさえいれば、
 問題の大半は解決できたはずです。

 つまりこの事件は、行政の支援によって
 未然に防ぐことができたはずなのです。

 容疑が事実か否かはもちろん司法の判断を待つことですが、
 その前に、行政としてこの事件を受けて
 学ぶべきことがあるはずです。

 こうした悲しい事件を繰り返さない為にも本市は、
 すでに実行している取り組みは再度その有効性をチェックをし、
 新たに取り組むべき点がないかを検討する必要があります。

 そこで6点にわたり、市長にうかがいます。



 (1)いわゆる「ヤミ金」への危険性に対する広報・啓発を
  本市は現在の体制で十分に行なっているといえるか

 一般的に、2年間も無職の40代男性が
 銀行から約1000万円も借り入れるのは不可能です。

 そこで容易に想像がつくのが、ヤミ金からの借り入れです。

 法律を完全に無視した数千パーセントの金利を取る、
 すさまじい脅しや暴力行為で取立てを行うなど
 ヤミ金は非常に危険な存在ですが

 生活苦などによって
 喉から手が出るほどお金に困っている人々にとっては
 こうした危険性が見えなくなってしまい
 被害はなかなか減っていきません。

 そこで有効な対策としては、
 そもそも借り入れをしない・させない予防の為の
 ヤミ金の危険性や情報を強く広報していくことです。

 そこで市長にうかがいます。

 <質問3(1)>
 ヤミ金の危険性に関する情報提供や広報・啓発は
 現在の体制で十分だと言えるでしょうか。

 市長の考えをお聞かせ下さい。















































 (2)多重債務に追い込まれている人々への支援を
  さらに積極的に行うべきではないか


 ヤミ金対策に加えて
 消費者金融による多重債務の対策も重要です。

 この数年、消費者金融は異様なまでに発達し、
 例えば携帯電話を使って、
 無審査・無担保でも300万円もの借金が
 わずか数分であっという間にできてしまいます。

 この手軽さや返済への計画性の無い借金によって
 多重債務に陥っている方は全国で200万人を超え、
 危機感を抱いた政府は
 多重債務問題改善プログラムを策定しました。

 そして5月の本会議でも僕は一般質問で
 市長に多重債務対策の充実を訴えたところ、

 市長は、市民相談室と消費生活センターの
 現在の取り組みを紹介すると共に、
 市役所のあらゆる部署、
 例えば、生活保護、家庭内暴力、保険料の滞納などの相談において
 多重債務問題の掘り起こしに努め、相談窓口へつないでいくと
 答弁されました。

 さらに『広報よこすか』において
 この問題の広報を即時に行なって頂きました。

 その後、神奈川県も動き、
 多重債務者対策協議会が設置され、
 市町村担当課長会議や多重債務相談研修が実施されました。

 そうした中、僕もさらに他都市の動向を調べたり、
 弁護士や司法書士の方の意見もうかがうなど
 勉強を重ねてきました。

 茅ヶ崎市では、この11月から多重債務相談専門の窓口を
 弁護士に入ってもらい開設するとのことでした。

 政府の多重債務者対策本部有識者会議メンバーであった
 ジャーナリストの高橋伸子さんらと
 意見交換をする機会を持つことができ、
 本市の取り組みについて、
 また、今回の殺人事件についてもお話しました。

 そして今、僕が再び確信しているのは

 「もっと本市にはやれることがある。
  さらなる取り組みが必要だ」

 ということです。

 改正貸金業法が施行されれば
 上限金利の引き下げと総量規制の導入等がスタートする為、
 こうした制度が動き出す3年後以降には
 新たな多重債務者の発生は抑えることが
 できるかもしれません。

 けれども、今すでに多重債務に陥っている方々の
 救済への取り組みを、
 本市が加速することで
 今回のような事件や自殺を防ぐ大きな力となります。

 そこで市長にうかがいます。

 <質問2(2)>
 各部局による多重債務者の掘り起こし・発見を
 「研修体制の強化」などによって
 さらに推進していくべきではないでしょうか。

 多重債務問題は解決できる、ぜひ相談してほしい、
 という市民へのメッセージは
 「広報よこすか」だけでは足りません。

 安易に消費者金融に走る若年層や
 生活困難から借金に追い込まれる中高年層に対して
 ターゲットを絞ってもっと様々な広報媒体を使って
 強いメッセージを送り届けるべきではないでしょうか。

 本市には長年この問題に取り組んできた
 民間団体「しおさいの会」もあります。

 こうした団体や弁護士会・司法書士会などと協力しながら
 茅ヶ崎市のケースを研究するなどの上で
 本市も「多重債務問題専門の相談窓口」を
 設置すべきではないでしょうか。

 以上の点について、市長の考えをお聞かせ下さい。








































 (3)長期にわたって無職の人々の就労を支援する
  さらなる取り組みが必要ではないか


 今回の事件に限らず、解雇や企業の倒産によって
 失業した中高年の方々が長期にわたって無職のままでいる、
 あるいは短期の仕事を転々とするしかない状況が
 依然として続いています。

 本市は組織として新たに雇用労働担当を設置するなど
 ハローワークと連携しながら、
 雇用状況の改善に取り組んでいますが
 長期の無職者への対策も不可欠です。

 そこで市長にうかがいます。

 <質問3(3)>
 長期にわたって無職の状況に追い込まれている人々を支援する
 さらなる取り組みが必要ではないでしょうか。

 お答え下さい。































 (4)「生活保護には至らないが生活困難な人々」への支援を
   強化していくべきではないか


 本市でも、
 長期のデフレによって経済的に困窮に追い込まれた方々が多く、
 現在は生活保護を受けるまでの状況ではないものの
 数年後にはどうなってしまうのだろうかと感じざるをえない、

 生活そのものが非常に不安定な、
 生活保護予備軍ともいうべき状況の方が
 多くいらっしゃる現状があります。

 こうした方々を対象に社会福祉士が
 継続的に支援する「地域日常生活自立支援事業」を
 厚生労働省は来年度からモデル事業として行う予定です。

 市としても、生活保護の申請、様々な市民相談、税や保険料の滞納、など
 様々な機会に、こうした方々との接点を持っているはずです。

 利用できる行政サービスの情報を積極的に提供したり
 継続的な見守りと支援によって
 生活保護の受給に至らずに済む方も多いはずです。

 そこで市長にうかがいます。

 <質問3(4)>
 生活保護には至らないが生活困難な人々に対して
 様々な形での生活支援を
 さらに強化していくべきではないでしょうか。

 お答え下さい。







































 (5)中高年男性の「孤独」「孤立感」を変えていく対策が
  必要ではないか


 今回の事件の容疑者の男性は、借金が1000万円にふくれあがる前に
 相談できる友人などは存在したのでしょうか。
 また、2年間の無職の間、地域との何らかのつながりは
 持つことはできていたのでしょうか。

 この男性に限らず、一般的に中高年の男性は
 仕事から切り離されると
 社会的に孤立しやすく「孤独感」「孤立感」を
 抱きやすい傾向が強くあります。

 OECDのある調査では、

 「友人や同僚と業務外で外出したり、
  サークル活動などに参加したことがあるか」

 という調査に

 「全く無い」

 と答えた割合の1位が日本人男性であり、
 この結果を受けて、
 日本人男性は世界で最も孤独だとする文献もありました。

 また、現在、全国的に「孤独死」の増加が問題になっています。
 一人暮らしの高齢者が亡くなって
 数ヵ月後に発見されるというイメージが強いと思いますが
 実際には、中高年の独身男性が亡くなる場合も多く存在しています。

 本市のこの5年間の自殺の統計を見ても
 40代から60代の男性が
 常に4割を占めています。

 中高年男性の多くが困難を誰にも相談できず、
 自殺へと追い込まれている現状をあらわしています。

 男女共同参画を推進しているとはいえ、
 男性がその心情を率直に吐き出していいんだという
 意識の変化や環境づくりはまだ実現できていません。

 そうした結果が「孤独死」「自殺」あるいは
 何らかの依存症のような形で表れている現状を
 変えていく必要があるはずです。

 そこで市長にうかがいます。

 <質問3(5)>
 退職したシニア層と地域とのつながりを持てるようにする
 取り組みは近年非常に多く行われていますが

 その手前である中高年の男性をターゲットとした
 「孤独」「孤立感」を変えていく対策が必要ではないでしょうか。

 市長の考えをお聞かせ下さい。












































 (6)犯罪被害者支援として、人権を侵害する報道には
  市として正式に抗議すべきではないか

 マスメディアには報道の自由がありますが
 それが明らかに市民の人権を侵害する場合には
 市として正式に抗議すべきです。

 今回の事件を報道した新聞各紙を読み比べると
 問題を感じる点がありました。

 まず、実名か匿名かの点です。

 容疑者である夫と被害者である妻の
 どちらの名前も記さなかった新聞がある一方で、
 夫婦の名前を実名で報道した新聞がありました。

 次に、住所を「横須賀市A地区B丁目」と
 何丁目とまで書いた新聞とそうでない新聞がありました。
 本市のようなまちの場合、何丁目とまで書かれれば
 すぐに実際の住所が特定されてしまいます。

 さらに最も問題だと感じたのは、
 夫婦のあいだにいる
 こどもの存在を報道した新聞があったことです。

 この殺人事件にこどもは関わっておらず
 そもそも報道する必要は無いものです。

 しかし、性別と年齢と学年までも記しているために
 この新聞を読んだ市民の多くには
 どの学校に通う誰なのか特定できてしまったはずです。

 また、テレビ局の中には
 学校をカメラで映し出した番組もあったようです。

 こうした報道には
 市として正式に抗議するべきです。

 父親が母親を殺した、という事件の悲惨さだけでも
 遺されたこどもはとても大きな痛みを負っているのに
 報道によってその事実を
 他人に広く知られてしまう必要はなかったはずです。
 今後もこの地域で暮らしていくことができるのでしょうか。

 僕はこの事件報道を受けて、個人として、
 本市の記者クラブと
 こどもの存在を報道した新聞社に抗議をしました。

 その対話の中である記者の方から
 「抗議は本来、被害者が行うべきものだ」との反論もありましたが
 「今回のように遺されたこどもには抗議などできないケースでは
  第三者である僕や市が抗議することは主旨に反しないはず」
 と述べると理解して頂けました。

 こうしたマスメディアとの対話は
 コミュニケーション戦略として非常に重要で
 まさに広報課の仕事のはずです。 

 正式な市の抗議とすることによって、
 マスメディアに本市の人権擁護の姿勢を示すべきです。
 また、犯罪被害者支援の観点からも
 必ずこの対応は行なうべきです。

 しかし、本市の対応は何も無しでした。

 「市として抗議すべきだ」と僕は提案しましたが
 広報課も犯罪被害者支援担当もどちらも抗議はしていません。
 このような対応で良いのでしょうか。

 そこで市長にうかがいます。

 <質問3(6)>
 本事件の報道において、事件の主旨をはずれて
 こどもの存在が特定されかねない報道があった点について
 犯罪被害者支援をすすめる立場からも
 人権擁護施策をすすめるも立場からも
 市として正式な抗議を行なうべきだったのではないでしょうか。

 市長の考えをお聞かせ下さい。



 以上で1問目を終わります。



市長の答弁は後日、掲載します。


 後日、新聞に一部の質問が掲載されました。

 (神奈川新聞より)

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