原子力空母はいらない!


2009年10月14日・市民不在の原子力防災訓練への批判

 先日開催された、3回目の原子力防災訓練に対して
 神奈川新聞から厳しい批判の社説が出されました。

 下に引用させていただき、フジノの意見を記します。

(神奈川新聞09年10月14日付社説より)

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 市民不在では不自然だ

 米海軍横須賀基地への配備から1年の
 原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)を使った
 日米合同の原子力防災訓練がさきごろ行われた。

 3度目の合同訓練も市民は不在だった。

 実効性の面でも、市民を守るための訓練に市民がいない
 という不自然な形を解消すべきである。

 横須賀市は2001年から毎年、市民も参加する形で
 原子力事故を想定した防災訓練を実施してきた。

 原子力艦船の寄港が続く同基地への備えなのに、
 米海軍は「事故の可能性は低い」として
 電話連絡のオブザーバー参加にとどまっていた。

 原子力空母の配備を控えた07年、米海軍側は姿勢を変えた。

 当時のジェームズ・ケリー在日米海軍司令官が
 横須賀市との関係に配慮して合同訓練が実現した。

 だが、ファクトシート(説明文書)で
 基地外への放射能漏れを想定していない米海軍の意向を市がくんで、
 訓練への市民参加は見送られている。

 一方で、08年には合同訓練とは別に、
 放射能漏れ事故を想定した市民参加による防災訓練が
 2年ぶりに復活した。

 半径3キロの範囲内の住民は屋内避難する
 と定められている国のマニュアルに基づき、
 今年も市独自で今月後半に米海軍横須賀基地に近い地区で実施されるが、
 米軍は参加しない予定だ。

 2つの原子力防災訓練の存在は市民の混乱を招く。

 市は市民の不安解消と安全確保を最優先に対応する必要がある。
 米海軍側が主張するように、
 これまで原子力艦船の事故がなかったとしても、
 放射能漏れに対する不安を抱いている市民が少なからずいることは事実である。

 日米両国が連携を密に取り合いながら、
 万が一の際に備えておけば市民も安心でき、米海軍への信頼も高まるだろう。

 蒲谷亮一前市長は昨年、2種類の訓練について

 「日米の基準がずれているので、
  国の基準をファクトシートの基準に直してほしいと思っている」

 と述べ、米海軍の考えを容認して、
 市民参加の訓練は必要ないともとれる見解を示した。
 これでは市民の不安は解消できまい。

 「チェンジ」を掲げて7月に就任した吉田雄人市長は、
 マニフェスト(選挙公約)で「市民サイドに立った政治を進める」と約束している。

 その言葉通りなら、日米合同原子力防災訓練への
 市民参加を米軍側に粘り強く働き掛けるべきである。

 (引用終わり)

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 フジノも社説の主張に
 全く同感しています。

 吉田市長は防災訓練をおえた後に行なった
 記者会見(9月29日)において、このような受け答えをしています。


 >・A記者
 > 10月26日の訓練の結果を踏まえて
 > とおっしゃいましたが、
 > 市民参加が1つのキーになると思いますが、今の時点でのお考えは。
 >
 >・吉田市長
 > 10月26日には本町地区の諏訪小学校と幼稚園で
 > 屋内退避訓練なども実施する予定です。
 > そうした訓練の結果を見て、
 > 市民参加について考えたいと思います。



 蒲谷前市長時代からバラバラに2つ開催されるようになった防災訓練を
 吉田市長もはとにかくまず『市長』として『体験してみる』という意味でしょうか?

 しかしすでに吉田市長は、市議会議員時代に
 今回開催された米海軍との防災訓練を見学はしています。
 (フジノもその場に居ました)

 安全対策をしっかりやるということは、
 悠長に『体験』してみないと分からないということで
 本当に良いのでしょうか?

 その考え方には強い疑問を感じます。

 訓練の精度を高める為に
 訓練を重ねる(=回数を増やす)ならば理解できますが

 ペーパーだけでは分からないから
 実際にやってみないと判断できない、なんて考え方はダメです。

 フジノの主張は、単に防災訓練を
 横須賀市・市民のみなさま・アメリカ軍の3者が合同でやればいい、
 というだけではありません。

 『合同』でやるのはまず最低限の当たり前のことなのです。

 いかに『現実の状況』に近づけて訓練を行なうか。

 その訓練のおかげで本当に災害が起こった時に
  どれだけ被害を減らせるように対応が取れるようになれるのか。

 これが必要な訳です。

 今のように3者合同でやることをぐずぐずとためらっているのでは
 最低限のレベルにも達していないと言わざるをえません。

 吉田市長は、この現状をおかしいと考えないのか、納得できません。

 また、このようなやりとりもありました。


 >・B記者
 > 市民参加の判断は、10月26日の訓練結果を踏まえて
 > ということですが、どんなところで判断するのですか。
 >
 >・吉田市長
 > 10月26日の訓練の結果を踏まえて、判断をしたいと思っています。
 > 訓練の書類を見ただけでは分からないこともあると思っています。


 「Aの結果、どういう観点で判断するのか?」と尋ねられたら
 「Aの結果、BやCの観点で判断します」というのがふつうの質疑です。

 それなのに吉田市長は、
 訓練結果を踏まえて「どんなところで判断するのか?」と問われて
 もう1度「訓練結果を踏まえて判断したい」と答えています。

 これでは全く何も説明していません。
 説明責任を果たすことや危機管理を重視すべきなのだから
 こういうトートロジー(同語反復)の無意味な答え方はやめるべきです!

 最後に、こういうやりとりもありました。


 >・C記者
 > 前市長の場合は、米軍が放射能漏れはないと言っているので、
 > それに基づいて参加は必要ないという説明でした。
 > 市長は、どのような理由ですか。
 >
 >・吉田市長
 > 自分自身参加してみて、
 > 理論的な側面も含めてご説明できればと思っています。



 吉田市長が10月26日の訓練結果を踏まえて
 どのようにインタビューに答えるのでしょうか。

 答えは2つ、予想できます。

 1.「自ら参加してみた結果、理論的に
    市民参加も必要であると判断した」

 2.「自ら参加してみた結果、理論的に
    市民参加は不必要だと判断した」

 この「理論的に」の部分に
 それなりの説明が入るのでしょうけれど

 くれぐれも前市長のように
 「ファクトシートに基づいて判断した結果」などとは
 吉田市長は言ってはいけません。

 そんなことを述べるような市長であれば、
 マニフェストで約束した安全対策も
 ウソっぱちだと言わざるをえないからです。

 まもなく10月26日が近づいています。

 危機管理とは何なのかを
 市長にはしっかりと考えていただきたいです。

 市民の安心感と実際の安全性を高めることと
 アメリカ軍との一定の関係を維持することは、矛盾していません。

 しっかりとした姿勢を示していただきたいです。



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