議会では、こんなやりとりしています

動画で質問の様子をみることができます。
市議会HPの日程平成19年2月5日をご覧下さい。

2007年2月臨時議会・本会議(2月5日)、市長への質問

 <はじめに>

 藤野 英明です。よろしくお願いします。



 住民投票はいまだ議論が分かれている制度です。
 したがって、地方自治の未来の為にも
 しっかりと議論を行ないたいと思います。


 1.市長は住民投票の「対象事項」をどう捉えているか


 (1)最終的な判断理由と根拠は何か?

 市長は意見書の中で、住民投票の「対象事項」を
 「自治体の意思によって決定できること」に限定すべきだとして、
 本件条例は必要ない、としました。

 まず市長にうかがいたいのは、
 その最終的な判断に至った「理由」と、
 その「根拠」はどこにあるのか、ということです。

 そもそも住民投票制度の法的根拠は、3つあります。

 第1に、憲法第95条に定める「地方自治特別法の住民投票」
 第2に、合併特例法で定める市町村合併に関するもの
 第3に、地方自治法第74条による
 「住民の直接請求」に基づいて条例を制定して
 住民投票を実施するものです。

 同じ「住民投票」という名前を取りながらも
 その対象も法的根拠も異なる3種類の住民投票があるのです。 

 今回の住民投票は、この3番目の法的根拠に基づくもので
 横須賀市の有権者9人に1人という
 たくさんの市民の方々によって
 「住民投票やるべきだ」と直接請求されたものです。

 しかし市長は
 日米両政府が決めた原子力空母の横須賀母港化について

 「横須賀市民としてイエスかノーかを言う必要は無い」、
 「住民投票の対象事項にはならない」

 と述べているわけです。

 市町村合併こそ住民投票の対象としてふさわしいと
 市長はくりかえし発言してきましたが
 それは「合併特例法に基づく住民投票」の話であって、
 今回の「直接請求による住民投票」とは全く関係がありません。

 今回のように「直接請求に基づく住民投票」は
 そもそも「対象事項をどこまでとするか」は
 今も学者の間でも議論が分かれています。

 市の権限が及ばないことはやるべきではない、
 という意見も確かにあります。

 しかし、蒲谷市長が否定している
 「国の専権事項」についてを対象とした住民投票も
 実際にはすでに複数、行なわれています。


 沖縄県では、日米安保条約に基づく地位協定の見直し及び
 基地の整理縮小に関して住民投票を行ないました。

 また、米軍再編に伴う基地移転の是非を問うた
 山口県岩国市の住民投票は記憶に新しいはずです。

 さらに、新潟県巻町では、
 国の原子力・エネルギー政策に関係する
 住民投票を行ないました。

 このように「直接請求に基づく住民投票」の
 「対象事項」をどこまでとするのか、
 実際には明確な決まりはありません。


 そのまちの市長と議会の判断しだいなのです。

 つまり蒲谷市長が、

 「私は、本当に市民のみなさんが
  横須賀を原子力空母の母港にしてよいのか、
  市民のみなさんに聞いてみたいと思います。

  原子力空母の母港化に賛成するのか
  反対するのか。

  これをはっきりと市民のみなさまに問いたいと思います」

 と、「対象事項」としてふさわしいと判断すれば、
 法的にも何ら問題なく、何の不都合もなく、
 住民投票を実施できるのです。

 にも関わらず、最終的な市長の判断は
 意見書の通りとなりました。

 残念ながら市長の判断を
 市民の代表である政治家として僕は理解することはできません。

 いったい何故そのような判断をなさったのでしょうか。

 そこでうかがいます。

 (質問)
 住民投票を求める多くの市民の意思に反して
 また、学説も分かれている直接請求に基づく住民投票の対象を
 あえて「自治体の意思によって決定できること」と
 極めて限定するに至った、
 その最終的な判断理由と
 その根拠はどこにあるのでしょうか。

 市長の考えをお聞かせ下さい。



 さて、続く2つの質問は、
 「直接請求に基づく住民投票」の「対象事項」について
 市長の考えを具体的にうかがうものです。

 (2)対象事項の「ポジティブ・リスト」について


 意見書で市長は、住民投票は
 「市町村合併のように自治体の意思によって決定できること」
 については「1つの有効な手段」と述べました。

 それでは、市町村合併以外には
 どのようなことが住民投票にはふさわしいのでしょうか。


 研究者の間では、住民投票の「対象事項」を
 具体的に挙げていくことを「ポジティブ・リスト」と呼んでいます。

 そこでうかがいます。

 (質問)
 市町村合併以外に蒲谷市長の想定する
 住民投票のポジティブリストとは
 具体的にどのようなものなのか、
 ぜひ具体的な事柄を挙げて市長の考えをお聞かせ下さい。



 (3)対象事項の「ネガティブ・リスト」について

 同様に、住民投票の対象としてそぐわない事項を
 具体的に挙げていくことを「ネガティブリスト」と呼んでいます。

 意見書では原子力空母の横須賀母港化について

 「横須賀市が最終的な決定権を持たない
  この問題については住民投票はなじまない」

 と市長は述べました。

 それでは、原子力空母の横須賀配備問題の他に
 住民投票のネガティブ・リストとは
 蒲谷市長は具体的にどのようなものを想定しているのか、
 ぜひ具体的な事柄を挙げて、市長の考えをお聞かせ下さい。



 2.今回の住民投票を行なうことで得られる効果について


 (1)住民意思を国に示すことは地方自治体の当然の権限ではないか

 市長は意見書で、
 外交関係の処理は憲法で規定された国の役割であり、
 地方自治体が国の決定に関与したり
 制限するようなことは認められない、
 だから、今回の住民投票条例は制定できないと述べています。

 しかし、先ほども例として挙げた
 沖縄県、山口県岩国市、新潟県巻町などで実施された
 住民投票の「対象」は
 いずれも決定権は国に属しているものです。
 これらの地方自治体には決定権はありません。

 にも関わらず住民投票を行なったのは何故か。

 それは、一方では、国の役割に関するものであっても
 他方では、その地域の住民の利益や
 権利と深く関わっているからです。

 だからこそ、国に対してしっかりと意思表明を行なう。
 そしてそれは決して国の役割を損なうものではない。

 地方自治法第1条の2第1項では、
 地方自治体の定義を

 「住民の福祉の増進を図ることを基本として、
  地域における行政を自主的かつ
  総合的に実施する役割を担うもの」

 としています。

 つまり、単に「決定権限」という意味で
 狭い解釈をするのではなく、
 国に対して住民の意見表明を行なっていくことも
 地方自治体固有の権限として捉えるべき
ではないでしょうか。



 (質問)
 「外交の処理」は国の専権事項であるのは当然ですが
 この郷土・横須賀で暮らす市民は
 安全・安心に暮らす権利があります。

 その市民が住民投票によって「意思を示す」ことそのものは
 憲法においても地方自治法においても
 全く問題は無いはずではないでしょうか。

 市長の考えをお聞かせ下さい。



 (2) 実質的に国の決定を制限することにはならないのではないか

 これまでに実施されてきた
 沖縄県、山口県岩国市、新潟県巻町、など
 その自治体の決定権限を越えた事項を対象にした
 住民投票を分析するとその効果は
 実質的に3つにまとめることができます。

 1.決定権限を持つ国に対して、地元住民の意思を強く伝えられる

 2.地元住民の強い意志を広く世論に訴えられる

 3.市長や知事はその後の行動に住民投票の結果の縛りを受ける


 住民投票の結果を受けた県知事や市長は
 当然ながら多数派の結果に基づいて政府との交渉を行います。

 住民投票の結果を受けて政府との交渉にのぞめば
 住民投票なしで交渉をするのとは重みが違います。

 また、住民投票を行なったことで
 全国的にその問題が注目されることになります。

 しかし、住民投票の効果とは
 実はここまでしか及ばないのです。

 現実的には、市長が意見書で述べたような
 「国の決定を制限する」までには至らないのです。

 住民投票制度とは、あくまでも住民の代表である
 市長の行動に縛りをかけるものであって
 政府の決定に制限をかけるものではありません。

 政府の決定をくつがえす力が無い、
 つまり、あくまでも住民の意思を明らかにするものであって
 正確な意味での「実効性」は持っていないのです。

 それでも、地元住民は自分たちの意思を
 政府に対して示す権利があるし、
 その機会は与えられなければならないと思います。

 それこそが地方自治だからです。

 (質問)
 このように分析をするならば、
 仮に今回の住民投票を実行した結果、
 住民意思の過半数が
 「原子力空母の横須賀配備に反対」となっても
 市長が意見書に記したような
 「国の決定を制限すること」にはならないのではありませんか。

 市長の考えをお聞かせ下さい。 



 3.市長は何故この問題で市民の声を聴く意思が無いのか

 (1)市民の声を聴こうという姿勢が何故この問題「だけ」無いのか?

 約2年前の市長選挙で、わずか6683票差という
 激戦の末に当選した蒲谷市長は、この4年間、
 徹底して市民の声に耳を傾けていくと決めたはずです。

 実際にこれまで市長は
 市内全域でタウンミーティングを行なうなど、
 市民の生の声を積極的に聴こうという姿勢を示してきました。

 高校生や大学生とも率直に語りあう市長の姿を
 これまでに僕は、共感と好感を持って受けとめてきました。

 しかし、この原子力空母の横須賀母港化問題だけは
 全く市民の生の声を聴こうという姿勢が見えません。

 かつて市の主催で「意見を聞く会」を行いましたが
 あまりにも閉鎖的で市民に開かれた場ではなく、
 単にアリバイづくりの為に行なったとしか思えませんでした。
 これをもって十分に意見を聴いたなどとは絶対に言えません。

 今回、有権者の9人に1人という
 あまりにも重い市民の声であるこの直接請求に対しても
 市長の意見書は、市民の想いを冷たく切り捨てています。

 それは、市民の声を積極的に聴いていこうという
 市長の姿勢と完全に矛盾しています。
 この矛盾がどうしても理解できません。

 (質問)
 市長、それは何故なのでしょうか?
 何故、この問題に限っては
 市民の声を聴こうとしないのでしょうか?


 ぜひとも納得のいくご説明をお聞かせ下さい。





 (2)「地方自治に半生をかけてきた」という市長の地方自治とは何か

 最後の質問です。

 市長にとって「地方自治」とは一体どのようなものなのか、
 ぜひお聞かせいただきたいと思います。

 市長は折に触れて「地方自治一筋に生きてきた」と語ります。

 昭和42年に自治省のキャリアになった市長は、
 昭和49年に生まれた僕の32年間の人生全てよりも
 長い年月を地方自治一筋に生きてきた訳です。

 けれども、今回の意見書を読んで
 市長の言う「地方自治」とは一体何なのか
 強く疑問を持ちました。




 地方自治とは、言葉のままに受けとめれば
 「このまちのことはこのまちの人々が決める」、
 ということのはずです。国が全てを決めるのでは無い。

 愛すべき郷土・横須賀に原子力空母が配備され、
 母港にされてしまう。とてもじゃないが
 地元市民として受け入れられない。

 僕はこのまちに生まれて32年間暮らしてきました。

 これが32年間このまちに生きてきた人間の
 率直な本音の気持ちです。

 幼い頃からこのまちで生まれ育った
 決して消すことができない「郷土を愛するこころ」、
 つまり「パトリオティズム」です。

 僕は、地方自治とは郷土愛、
 パトリオティズムだと信じています。

 一方、「愛国心=ナショナリズム」という言葉があります。
 この国に生まれた国民は、国を愛するこころがある
 という考え方です。

 しかし、そもそも愛国心よりも先に
 人はみな自分や家族が暮らしてきた郷土を愛する気持ちを
 こころに強く持っているはずなのです。

 郷土愛の素直な気持ちに立てば、地方自治とは、
 このまちに暮らす人々の声をしっかりと聴き、
 このまちに暮らす人々が明日も笑顔で暮らせるように
 政治家として全力で働いていくことです。

 けれども、市長は郷土愛よりも
 愛国心が優先していませんか?


 自治省のキャリアとして長く横須賀を離れて
 全国をまわっていたからでしょうか。

 国の官僚として、国の仕事をしてきたからなのでしょうか。

 もしも本当にこのまちを愛する郷土愛があるならば

 「郷土・横須賀を愛するが故に
  原子力空母の横須賀配備に対して
  直接の利害を被ることになる地元住民として
  住民意思を示したい」

 という率直な市民の想いの発露である
 直接請求を否定することはできないはずです。

 今回の意見書の内容は、
 横須賀市民として裏切られた気持ちがします。


 それは、市長ご自身がくりかえし語る
 地方自治一筋の人生だったという言葉をも
 自ら否定することにはなりませんか?

 (質問)
 市長にとって「地方自治」とは
 一体どのようなものなのか、
 ぜひ率直な考えをお聞かせ下さい。

 また、今回のような住民からの切実な直接請求を
 否定することになる意見書を出すことは
 市長ご自身の半生をかけた
 「地方自治」を否定することにはならないのでしょうか。


 ぜひ市長の考えをお聞かせ下さい。



市長の答弁は後日、掲載します。

→本会議での質問のページへ
→はじめのページにもどる