2008年9月・決算議会 本会議(10月14日)、議案への討論 | |||
議 案 9 4 ・ 9 5 ・ 1 0 1 ・ 102 号 に 反 対 の 立 場 か ら の 討 論 と 1 0 3 号 に 賛 成 の 立 場 か ら の 討 論 |
藤野英明です。 まず最初に、 議案第101号水道事業会計決算と 第102号下水道事業会計決算の2件を不認定とする理由と あわせて第103号病院事業会計決算を認定とする理由を 申し上げます。 それは「情報公開の正確さ」という基準からです。 これまでもくりかえし述べてきましたが 本市の厳しい財政状況を改善する為には まず何よりも現在の財政の「実態」を 正確に把握することが「大前提」となります。 それがどれほど悪いものであろうとも 正確な「実態」を把握しなければ、 そもそも「有効な対策」は打ち出せません。 したがって決算における財務諸表は 企業の活動を正確に反映していなければならず 病院・水道・下水道などの地方公営企業においても同じです。 特に、民間企業並みのディスクロージャーを実現する為に 地方公営企業においても必要な1つの処理として 「退職給与引当金の計上」を行なうべきだと僕は訴えてきました。 「退職給与引当金」とは「負債」に計上されます。 つまり「将来必ず支払う義務があるお金」 「将来のお金のマイナス」を意味しています。 同時に、1年間の収益に応じた 正確な「費用」が分かることになります。 逆に言えば、この引当金の計上がなされていなければ 将来支払うべきお金がいくらなのかも分かりませんし、 今期にどれだけ費用がかかっていたのかも 正確には分かりません。 今回、水道・下水道の2つの決算を認められないのは、 この全額引当がなされなかったからです。 僕は2007年6月議会で一般質問を行ない、 退職給与引当金を計上すべきだと質しましたが、 上下水道局長はその計上の必要性を答弁で認めた上で、 まずは平成18年度決算において 貸借対照表の欄外に 注記事項として必要額を掲載しました。 そのことを僕は一歩前進だと評価はしましたが 欄外の注記事項ではなくて しっかりと財務諸表に計上してほしいと意見を述べました。 それから1年が経ち、当然ながら今回の決算では 財務諸表に全額が反映されるものと信じていました。 しかし、今回も欄外の注記のままにとどまりました。 (2007年度水道事業決算書・貸借対照表の欄外注記事項より (2007年度下水道事業決算書・貸借対照表の欄外注記事項より 一方、病院事業では、平成18年度に一括して 退職給与引当金を計上した為に 今回の決算でも大きな損失を出しています。 しかし、赤字であってもそれが正確な情報なのですから 市民へのアカウンタビリティは果たされており、 今後は「経営健全化計画」を しっかりと進めていけば良い訳です。 僕は病院事業のそうした姿勢を積極的に評価していますので これが赤字決算であっても、今回、僕が 病院事業の決算を認定する理由です。 一方の水道・下水道事業においては 決算説明資料の総括事項の中で 厳しい経営環境であったが 経営の効率化に努めた結果、 純利益の計上という財政目標を達成したとあり、 当年度純利益の額は、 水道では6億5252万円、 下水道では2億3732万円も出たことになっています。 しかし、もしも退職給与引当金を全額計上していれば どちらも本当は赤字でした。 僕の推計では当年度純損失の額は 水道では約15億円、 下水道では約14億円だったはずです。 これでは、財政目標を達成したとは言えません。 僕はこれまで下水道料金の値上げが必要だと訴えてきました。 何故ならば、 引当金を計上すれば本当は大きな損失があること、 1100億円もの借金を抱えていること、 さらに今後も高度処理の導入や 合流式下水道の改善など 100億円を超える新たな支出が見込まれているにもかかわらず 収入が今後増える見込みが無いからです。 ですから、徹底的な歳出カットを行なっても これ以上はカットできない所まで来たならば 長期的視野に立って 値上げもタブー視してはいけないと訴えてきたのです。 けれども、現在の財務諸表では 大幅な黒字で純利益まで出ているのですから、 値上げをする根拠もありません。 昨年度決算から1年間、 この財務諸表が改善されることを信じてきましたが 改善が見られない以上、 本日をもって僕は 今までの下水道料金の値上げの主張は全てとりさげます。 正確な実態を反映しない財務諸表である以上、 今後、値上げの議論が出ても 僕は一切反対をしていきます。 何故、上下水道事業は市民への説明責任を果たさないのか 全く理解できません。 仮に病院事業が行なったように 退職給与引当を1会計年度に 「特別損失」として全額計上することが 損益に与える影響が大きすぎるならば 民間企業の会計で認められているように 15年間かけて費用化する「会計基準変更時差異」によって 計上する方法もあったはずなのです。 しかし、前回の決算から1年間も猶予があったにもかかわらず そうしたことも行なわなかった訳で不誠実です。 平成20年度決算では必ず改善されるよう強く要請します。 以上のことから、 企業会計として 実態を正確に反映する努力を行なった病院事業の決算は認定し、 一方、適正な処理を行なっていない 水道・下水道事業の決算は不認定だと判断しました。 ● 次に、議案第95号国民健康保険の決算を 不認定とする理由を述べます。 本市は平成19年10月から、結核精神医療給付金で 全額補助していた精神科通院医療費を廃止してしまいました。 平成18年度決算では3万9270件もの実績があり、 障がいによってなかなか働くことができないにもかかわらず 通院と服薬が必要な精神障がいのある方々の 地域での暮らしをすすめて、 入院を予防する為の大切な取り組みでした。 しかもこの給付を実施していたのは 全国でも本市とわずかの自治体だけ、全国に誇るべき取組みでした。 この給付を実施していた自治体が 天下の悪法である障害者自立支援法の成立によって 補助の廃止を決めていく中で、 他都市は本市の取組みを注目していました。 例えば、平成17年12月に平塚市で行なわれた 第5回国民健康保険運営協議会の議事録によれば 精神科通院医療費の補助を廃止するという事務局提案に対して 出席したメンバーの1人が、 横須賀市のように給付を継続すべきだと発言しています。 他都市の精神障がいのある方々は、 「横須賀市が継続しているのだから自分のまちも続けよう」と 本市の取り組みを道しるべにしていたのです。 それを本市は去年10月で廃止してしまいました。 このせいで、県内では最後まで継続していた川崎市にも 廃止が飛び火してしまいました。 今年2月に発表された 「川崎市国民健康保険 結核精神医療付加金制度の廃止について」 のパブリックコメントには、このように記されています。 「県内においては、 平成19年10月の横須賀市の制度の廃止により 本市のみが付加給付を実施していること等の観点から 制度の見直しを検討してまいりました」 こうして、最後の砦であった川崎市の補助も 横須賀市がやめたのだからしかたがない、 という連鎖を引き起こして 他都市の廃止への口実を与えてしまったのでした。 本市のこの罪は非常に大きいと感じています。 予算規模はわずかに約3000万円でしたが この取組みが本市に暮らす精神障がいのある方々をはじめ、 全国の精神障がいのある方々に与えていた希望は 大きなものでした。 それを廃止したのです。 しかも、廃止したならば、 せめてその後の精神障がいのある方々のフォロー、 つまり、自己負担をしながらも きちんと通院を続けていられるのかを 追跡調査をすべきであるにもかかわらず この点について、今年3月5日の民生常任委員会にて 追跡調査を行なっているのかと僕は質しましたが 健康福祉部の答弁では 現在把握していないし、今後も把握しない、とのことでした。 一方的に補助を廃止しておいて、 その廃止のダメージを受けた方々が その後どうなってしまったかの調査も行なっていないとは あまりにもひどいことです。 このような決算は絶対に認定できません。 これが議案第95号を不認定とする理由です。 ● 最後に、議案第94号一般会計の決算を 不認定と判断した理由を申し上げます。 限られた財源を何の為に使うのか、という 「政策の優先順位」の基準から認定できません。 その具体例として、 横須賀美術館の運営費用の赤字をとりあげます。 平成19年、市制100周年を祝うとともに 美術館がスタートしました。 財政の厳しい本市において他都市からの観光客の増加や 定住促進をねらっての政策だったことは理解できます。 これが長期的に経済効果や行政効果があったか否か、 つまり政策的に正しかったか否かについては 単年度の決算ではなく いずれ歴史が審判を下すことでしょう。 ただし、財政難の中での不要不急な政策という観点からは やはり優先順位は低かったと僕は判断しています。 建設にあたっての借金の残高は 40億943万8632円で、完済までには25年間かかります。 オープン1年目の美術館の運営管理費は マイナス3億5473万円となりました。 どんなハコモノもスタートの年は 『ご祝儀相場』となるにも関わらず これだけの赤字が出たことに怒りを覚えます。 社会保障・社会福祉の財源を確保することこそを 政策の優先順位に掲げる僕にとって もしこれだけの税金を 他の事業に使えたならばと、考えずにはいられません。 例えば、交通事故によって一家の生計の中心を亡くしてしまった 小・中学生・高校生をサポートする為に 本市は1年間で約12万円の奨学金を支給しています。 決算は、総額わずか377万1326円でした。 厚生労働省の最新の全国母子世帯等調査結果では 母子家庭の平均年収はわずか213万円でした。 そこに年12万円の奨学金が加わっても 一家の大黒柱を失った「ひとり親家庭」の生活の厳しさは 決して大きく改善されることはありません。 あるいは、家庭の経済的な理由で高校進学は困難ではないかと 中学校の先生が判断した中学3年生について 先生の申請に基づいて審査の末に、 本市は奨学金を毎月1万円支給しています。 今回の決算によれば、奨学金が支払われたのは152名で 費用はわずかに1809万円でした。 くりかえすまでもありませんが 毎月1万円の奨学金でどれだけ生活が救われるのでしょうか。 「こどもの貧困」という新たな概念がありますが、 親の経済的な状況によって こどもたちの暮らしまで決まってしまう 格差が固定化されつつある社会において 今、政治と行政が積極的に こどもたちの未来にこそ投資していかなければ 負の世代間連鎖をくいとめることはできません。 今目の前にある絶望や失われつつある希望から こどもたちを救うのは誰が判断しても正しい政策のはずです。 そんな危機的な現状の中で、現在行なわれている 交通遺児への奨学金を10倍の金額にしても 経済困窮の高校生への奨学金を10倍の金額にしても それでも美術館の赤字よりも少なくて済む という税金の使いみちはおかしいと思います。 2007年12月に発表された衛生年報によると 4年ぶりに横須賀市では自殺が100人を超えました。 決算によれば、自殺対策にあてられた費用は わずか23万1645円でした。 こうした税金の使いみちを決めるのは 市長の「政策の優先順位」の判断に基づくものですが 美術館の運営費用の赤字を埋めるために 経済困窮の高校生への奨学金の20倍、 交通遺児への奨学金の100倍、 自殺対策への1500倍もの、多額の税金が使われました。 これだけの税金を もっと市民の命を救い生活を守る為に使うことこそが、 在るべき優先順位であったと僕は考えています。 このことこそが議案第94号を 不認定とした最大の理由です。 ● 先輩・同僚議員のみなさまにおかれましては 決算認定の在るべき姿にたちかえって、 計数的な観点からも、 政策的な観点からも、 本当に認定するに足る決算なのか否かを 改めてご再考いただけますようお願い申し上げます。 以上をもちまして、僕の討論を終わります。 ありがとうございました。 |
フジノの討論もむなしく
議会の多数派はフジノと逆の結論を出しました。