2007年6月議会・本会議(5月31日)、市長への質問 | ||
<はじめに> 藤野 英明です。よろしくお願いします。 1.企業会計(水道・下水道・病院・臨海土地)の会計ルールを 全て同一の基準とし、より実態を反映した財務諸表へ 改善すべきではないか 本市の財政健全化に向けて、『集中改革プラン』をはじめ、 様々な行財政改革が行なわれています。 しかし、そもそも財政健全化を実行する「大前提」は、 現在の本市財政の「実態」を まず正確に把握することであるはずです。 本来、正確な「実態」を把握しなければ、 有効な対策は打ち出せません。 本市には、一般会計と特別会計に加えて、 水道・下水道・病院・臨海土地造成の 4つの地方公営企業があります。 この4企業は、民間企業と同じ 発生主義・複式簿記の会計ルールによって 財務諸表が作られています。 財務諸表は、その企業の「実態」を 正確に映し出す鏡でなければいけません。 しかし、完全な民間企業とは異なり、 本市の4つの企業会計では 会計処理のルールが統一されていません。 つまり、実態を映し出すはずの鏡が バラバラということになります。 (1)下水道事業の会計に退職給与引当金を計上すべきではないか まず第1に、下水道事業について取りあげます。 その理由は財政的な影響の大きさからです。 下水道事業は本市の市債残高の 3分の1にあたる約1100億円の借金を抱えており、 一般会計に次いで 早期の財政健全化が必要です。 現在『上下水道事業マスタープラン2010』と 『集中改革プラン』に基づいて 人件費の抑制、遊休資産の売却、 民間委託の推進、高利の企業債を低利に借換、 企業債の繰上げ償還、などの 様々な経営努力が行なわれています。 しかし、今後も高度処理の導入や合流式下水道の改善などに 多額の費用がかかる見込みです。 歳出カットを徹底的に行なって これ以上はカットできないところまでいけば 今後は収入の見直し、つまり下水道料金の値上げも 視野に入れていく必要があります。 現行のマスタープランが終わる2010年まで 15年間にわたって値上げは絶対に行なわないと 上下水道局は宣言していますが まもなく新しいマスタープランを作る時期が近づいています。 長期的視野に立って将来に渡る市民全体の利益を考えれば 社会保障制度の維持・継続の為にも 本市の財政健全化は不可欠であり、今後は 料金改定の議論もタブー視してはいけないはずです。 けれども、こうした議論を行なう前に必要なのが 「実態」を正確に把握することですが 現在の下水道の財務諸表は、 他の企業会計に比べると問題があります。 それは「退職給与引当金の計上」です。 これは民間企業であれば必ず行なわれる会計処理ですが 下水道事業では行なわれていません。 退職給与を引き当てないということは ある1年間の下水道事業を行なった結果、 どれだけ本当に費用がかかったか分からない 費用が不足した損益計算書と、 将来いくら負債があるのか分からない 負債が不足した貸借対照表とが作られている訳で 実態を反映しておらず、大きな問題です。 監査委員も数年前からこの問題点を指摘してきましたが 水道ではすでに計上されており、 病院でも昨年度から新たに計上されることとなり、 残すは下水道のみとなりました。 1つの市が経営する複数の企業の間で 会計処理のルールが異なっていることも問題です。 より正確な財務情報へ正していくことは 市民に対する説明責任を果たすことでもあります。 そこで上下水道局長にうかがいます。 (質問) 下水道事業も退職給与引当金を 適切に計上すべきではないでしょうか。 上下水道局長の考えをお聞かせ下さい。 (→上下水道局長の答弁はこちら) |
||
(2)退職金を会計間で適切に負担していくべきではないか 第2に、退職給与についてもう1つ問題なのが、 人事異動による会計間での費用負担が 正確に行なわれていないことです。 ある市職員が、 病院・水道・下水道・臨海土地造成の4つの公営企業と、 それ以外の他の部署とで人事異動をした場合、 退職金は最後に所属した部署の会計だけが 全額を負担しているのです。 例えば、下水道事業に30年勤めた後に 健康福祉部に5年間勤めて定年退職したならば 健康福祉部の会計である一般会計が 退職金を全額支払っているという現状があります。 しかし本来ならば、所属した部署ごとに所属した年数に応じて それぞれの会計が費用負担しなければならないので、 この場合は、下水道会計から30年分、 一般会計から5年分をそれぞれ負担すべきなのです。 このこともまた正確な財務諸表の作成上、大きな問題です。 繰り返しますが財政健全化の為には 正確な「実態」の把握が不可欠です。 そこで市長にうかがいます。 (質問) 退職金の負担は、 職員が所属した各部局・各会計での勤務年数に応じて、 各会計がそれぞれ適切に負担すべきではないでしょうか。 市長の考えをお聞かせ下さい。 |
||
(3)監査委員が提出した「要望」への検討状況はどうなっているのか なお、この2つの問題点については すでに昨年9月に監査委員が連名で 改善を求める「要望書」を市長宛に提出しています。 それから9ヶ月が経ちますが 未だに回答が成されていません。 改善に向けてどのような検討を行なったのでしょうか。 (質問) 現在までの検討状況について またその検討結果についてお答え下さい。 |
||
2.アメリカ軍兵士の犯罪から市民を守る為の「ソフト面」の対策の 今後の在り方について 昨年1月に横須賀市民の女性が アメリカ軍兵士に殺された事件を受けて 市民の安心・安全を守る為に 「基地周辺地区安全対策協議会」が作られました。 協議会のこれまでの最大の成果は 「ハード面」の整備として、基地周辺の繁華街に スーパー防犯灯を8基設置したことでしょう。 昨年9月議会で僕は 「ハード面」での成果を出した後は 「ソフト面」の対策を重視していくべきだと 協議会の方向性を質したところ、市長は答弁で 当初から協議会は「ハード面」のみでなく 「ソフト面」での対策が重要であるとの認識を示しました。 その答弁どおり、先月17日には 協議会のメンバーがアメリカ軍基地内を訪れ、 新しく日本へ赴任したアメリカ兵の教育プログラムを視察して 意見交換を行いました。 アメリカ兵による犯罪を防ぐには、 アメリカ軍の教育体制の充実しかない。 現在の教育プログラムが不十分な為に犯罪が起こるのだから、 実効性あるプログラムにすべく 横須賀市民が意見を言えるべきだ。 というのが僕の持論ですから 今回の視察と意見交換の実現は評価しています。 しかし「ソフト面」の対策も 実効性が無ければ意味がありません。 今回の視察と意見交換はわずか2時間だけで 十分だとは思えません。 そこで市長にうかがいます。 (質問) 協議会メンバーが行なったアメリカ軍基地内での 教育プログラムの視察はどのような内容だったのですか。 具体的なスケジュールやプログラムの様子は どのようなものだったのでしょうか。 お答え下さい。 |
||
(2) 意見交換の様子はどうだったか また、教育プログラムの視察に続いて行なわれた 協議会メンバーとアメリカ軍との「意見交換会」では、 具体的にどのような意見が両者から出されたのでしょうか。 協議会メンバーの意見に対して アメリカ軍側はどのような回答をしたのでしょうか。 協議会メンバーの意見をとりいれて 教育プログラムが改善されることはあるのでしょうか。 以上、お答え下さい。 |
||
(3) 継続的に今後も、視察と意見交換をやるべきではないか さて、昨年の第3回定例会で僕は、 沖縄県の取り組みを紹介しました。 本市と同じくアメリカ軍兵士が悲惨な事件を起こした沖縄では 県民を含めたワーキングチームが作られて アメリカ軍の教育プログラムや 軍の飲酒取締りを視察したり 海兵隊員の採用方法について説明を受けて、 教育プログラム改善やさらなる飲酒取締りや 採用にあたっての審査を厳格化するようになどの提案をして、 アメリカ軍もこれらを積極的に検討すると述べています。 ところが、本市の場合は 「視察と意見交換は今回のみで今後の予定は無い」と 事前のヒアリングでうかがいました。 わずか2時間の視察と意見交換を たった1回行なっただけで本当に十分なのでしょうか。 横須賀市民がひどい殺され方をしたにも関わらず ソフト面の対策はこれだけで本当に良いのでしょうか。 そこで市長にうかがいます。 (質問) 本市の協議会も沖縄県と同様に 今後も積極的にアメリカ軍の「教育体制」の視察を行なって ソフト面の改善の提案や意見交換を 継続的に行なっていくべきではないでしょうか。 市長の考えをお聞かせ下さい。 |
||
(4) 今後の協議会の在り方・方向性・予定はどうしていくのか さて、現在、アメリカ軍は 横須賀市内に軍人用の民間住宅を建設する 『賃貸住宅提携プログラム』を進めています。 将校用の5階建て集合住宅をはじめ、 4月現在ですでに約330戸の建設が決まっています。 さらにケリー司令官は 「来年は原子力空母が横須賀に来るので 引っ越しも増える」 と話したと報道されています。 (神奈川新聞4月13日記事より) 市内にアメリカ軍兵士が増えていけば、それに比例して、 アメリカ軍兵士絡みの犯罪も増えていくのではないか。 市民の安心・安全を守る為には わずか8基のスーパー防犯灯だけでは 対応しきれないのではないか。 そんな懸念を無くす為にも 今後も協議会が果たすべき役割は非常に重要です。 まさに市長が協議会は「ハード面」のみでなく 「ソフト面」での対策が重要であるとの認識を示したとおり、 今後も定期的に協議会を開催して 積極的に「ソフト面」からの対策を提言していくべきです。 そこで市長にうかがいます。 (質問) 原子力空母の横須賀母港化に伴うアメリカ兵の増加など 市内の環境変化に応じた 適切な対策が必要ですが 今後の協議会の在り方はどのように考えていますか。 市長の考えをお聞かせ下さい。 (→市長の答弁はこちら) |
||
3.アメリカ軍兵士の犯罪から市民を守る為の、 アメリカ軍側の積極的対応を 本市は強く求めていくべきではないか (1)スーパー防犯灯に関するアメリカ軍の広報体制を把握しているか 協議会の「ハード面」の成果として、 抑止力や迅速な通報の為に スーパー防犯灯の設置が行なわれました。 4月11日に行なわれた汐入駅前での システム始動式に僕も立ち会いましたが デモンストレーションでは 犯罪の発生に対して、 スーパー防犯灯での通報、警察が現場へ急行、と スムーズに行きました。 これが深夜で人通りが無い状況でも 実際にうまくいくかどうかは、 スーパー防犯灯の存在や位置や使い方を 横須賀市民のみなさん・本市への来訪者のみなさんが 知っている必要があります。 「被害者側」である本市は すでに「広報よこすか5月号」で スーパー防犯灯の設置を大きく報じましたし、 防犯灯が設置された近隣の町内会では 説明会などが行なわれているようです。 しかし、そもそも犯罪をおかさせない「抑止力」として スーパー防犯灯が機能する為には 「加害者側」であり、 かつ今後も加害者側になる可能性の高い 横須賀基地の全てのアメリカ兵が スーパー防犯灯の存在を知る必要があります。 設置された経緯である殺人事件や 迅速な通報が可能であることや カメラが常時監視していることを 全てのアメリカ兵に対してしっかりと周知しなければ、 抑止力としては機能しません。 つまり、犯罪を無くせるかどうかは アメリカ軍側の努力にかかっているのです。 例えば、日本に初めて赴任したアメリカ兵への講習の中で 必ずスーパー防犯灯について教える。 あるいは、基地内の掲示板や 基地から外出して横須賀市に向かうアメリカ兵たちが 必ず見える位置にスーパー防犯灯の説明が張り出されている。 上官が部下への訓示の中で繰り返し、説明を行なう。 こうした不断の取り組みが不可欠です。 そこで市長にうかがいます。 (質問) アメリカ軍では、スーパー防犯灯の設置について いつ、誰を対象に、どのような方法で、どれくらいの頻度で、 広報・周知を行なったのでしょうか。 この具体的な内容を本市は把握していますか。 お答え下さい。 |
||
(2) 市長はアメリカ軍の広報体制に満足しているか さて、スーパー防犯灯が設置されてから折に触れて 実際に夜に汐入や本町の飲食店で 過ごしているアメリカ兵に、僕は話しかけてみました。 「この周辺にカメラ付きの 通報装置つきの防犯灯があるのを知っていますか」 と質問すると 「知らない」 と答える人ばかりでした。 こうしたことから、 アメリカ軍の広報・周知はまだ全く足りていない、 と僕は感じています。 知らなければ抑止力にはなりません。 にも関わらず、実際には 存在さえ知らないアメリカ兵が多いはずです。 そこで市長にうかがいます。 (質問) 先に質問したアメリカ軍のスーパー防犯灯の周知の取り組みを 本市が具体的に内容を把握しているのであれば、 その広報・周知の方法・頻度などについて 「今のままで十分である」と市長は思いますか。 それとも「もっと周知を徹底すべきだ」と思いますか。 市長の考えをお聞かせ下さい。 |
||
(3) 市外住民やいわゆる水商売の方への周知も不可欠ではないか 広報・周知の徹底はアメリカ軍の努力が重要ですが 加えて最後に1点、本市が取り組むべきことを 申し上げたいと思います。 それは、町内会にも属していない、横須賀市民でも無い、 そして、犯罪に遭う可能性の高い存在の人々に対しても 本市がしっかりとスーパー防犯灯の 広報・周知を行なう必要性です。 特に、アメリカ兵との交際を求めて近づいていく女性たちや 深夜まで営業している飲食店などに勤める女性たちは 犯罪に遭いやすい存在と言えるでしょう。 横須賀に限らずアメリカ軍基地があるまちでは、 全国的に必ずアメリカ兵との交際を求めて 市外から訪れる女性たちが存在しています。 これは決して侮辱ではなく「実態」として アメリカ兵と交際したいという強い欲求を持って みずから積極的にアメリカ兵と関わっていくので、 彼女たちが恋愛がらみの暴力事件や 性的な犯罪にまきこまれる可能性は 一般の横須賀市民以上に高いでしょう。 また、大滝町・若松町・米ヶ浜通り・本町などには スナックやクラブやキャバクラなど 深夜まで営業している飲食店があり、 多くの女性が働いています。 明け方に仕事を終え、4時から6時くらいの間 帰宅の為に横須賀中央を 1人きりで歩いている女性たちがたくさんいます。 こうした方々と話してみると 殺人事件が起こったこともそもそも知らず スーパー防犯灯の存在も知らない人がほとんどでした。 彼女たちもまた犯罪に巻き込まれる確率は 一般市民以上に高いといえるでしょう。 したがって、こうしたアメリカ兵がらみの 犯罪に対してハイリスクな人々に対しても 周知を徹底する必要があります。 広く市民全体に広報するポピュレーションアプローチと同時に、 犯罪に遭う確率が高いハイリスクな人々に対して ピンポイントで広報するハイリスクアプローチの 2つの方法によって周知の徹底が実現されます。 本気でアメリカ兵による犯罪を無くす為には ここまで徹底的に行なうべきです。 そこで市長に伺います。 (質問) アメリカ兵との交際目的で本市を訪れる市外の住民や 深夜まで営業している飲食業などに勤める人々に対しても スーパー防犯灯設置の 経緯や使用方法などを 周知すべきではなないでしょうか。 |
||
4.多重債務を抱える人々への支援の必要性 今年の第1回定例会で僕は、 自殺予防総合対策をすすめる立場から 自殺に追い込まれる大きな原因の1つである 多重債務問題について 本市も総合的な支援体制と 市役所内外の連携体制をつくる必要がある と申し上げました。 答弁として市長は 多重債務者対策を行っている他の自治体の状況等を把握して、 自殺予防に効果があるかどうか、研究していきたい と述べるにとどまりました。 しかし、多重債務者対策が自殺予防に効果があることは すでにいくつもの研究から結論が出ています。 さらに、内閣府が4月に発表した 「自殺総合対策大綱(案)」においても 「基本的考え方」として 「多重債務等の相談支援体制の整備」が提唱されています。 また、内閣に設置された多重債務者対策本部が 4月20日に決定した「多重債務問題改善プログラム」の中では 市町村の役割として 「多重債務者への対応は自治体自らの責務」との意識を持って 自ら主体的に相談窓口における 積極的な対応を行なうことが望まれる と明記されました。 役所の複数の部署が連携して対策に取り組むことや、 市町村における相談窓口の対応充実などをはじめ、 市町村が多重債務者対策を積極的に行なうべきだと 政府は求めています。 多重債務者対策の実施は、複数の効果を生み出します。 まず何よりも多重債務に苦しむ人々の 生活を再建していく効果があります。 同時に、自治体にとっては 滞納されている保険料や税金等の納付を 確保できるメリットもあります。 そして、多重債務の解消は 自殺に追い込まれる人々を救うことにも つながっていきます。 いずれの視点に立っても 最も市民と深く関わることができる地方自治体である市町村は 多重債務対策に積極的に取り組むべき 必然性と重要性があります。 そこで市長にうかがいます。 (質問) 本市でも多重債務者対策の積極的な実行に向けて 対策を具体的に検討していくべきではないでしょうか。 お答え下さい。 以上で1問目の質問を終わります。 |
後日、新聞に一部の質問が掲載されました。 (07年6月2日・神奈川新聞より) |